不器用女のズボライフ

どうしようもなく不器用でズボラな女-マナ-の能天気な日記。

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【読書感想文】君の膵臓をたべたい 住野よる

 

「膵臓(すいぞう)」がどこにあるのか、どんな働きをしているのか、私は知らなかった。(まず読めなかった)
だから、この小説の題名を本屋大賞のランキングで初めて見たとき「インパクト狙い?すごい題名だな」くらいの印象しかなかった。

そんな薄い印象しかなかったのに、私がこの本を買った理由は、書店で並んでいたたくさんの本の中で淡い桜色のこの表紙を一目で気に入ってしまったから。
満開の桜が咲く春は、前向きでポジティブなイメージなのに、表紙に描かれている二人の高校生はお互いに背を向けていてどこか切ない。

そしてその美しい表紙に似つかわしくない「君の膵臓を食べたい」という題名。

目を引き、思わず手に取らずにはいられない、素晴らしいデザインだった。


裏表紙に書いてある作品説明の「読後、きっとこのタイトルに涙する」や、帯の「ラストは涙涙涙。でも爽快感は格別です」という文字を見て、きっと、恋がしたくなるような、純愛青春小説だと期待した。(いくつになっても女は恋がしたいのです)

 

ある日、高校生の僕は病院で一冊の文庫本を拾う。タイトルは「共病文庫」。
それは、クラスメイトである山内桜良が密かに綴っていた日記帳だった。
そこには、彼女の余命が膵臓の病気により、もういくばくもないと書かれていて——。
ウィキペディアより

  

 

主人公の「僕」は、友達が一人もいない。反対に、ヒロインであるさくらはクラスの中心的存在。
この正反対の二人の、切ない恋の物語。
日常会話のセンスが良く、二人の掛け合いが楽しかった。

ヒロインは余命1年なんだけれど、それをネタに笑える楽しい会話のテンポが良くて読み始めからすぐに引き込まれた。
ただ、高校生でこんな返しができる男の子が、【地味なクラスメイト君】なのには共感できないけれど。
会話が楽しい、もっと読んでいたいと思う小説は「狼と香辛料」以来だった。

 
他にこの小説の特徴的な部分は、【○○くん】という表現だ。
主人公の僕が名前を呼ばれたときにその相手からどう思われているのか、僕が思いこんでいるイメージをこの【】で表している。

僕と登場人物の距離感をとても上手に表現している。
読後、このタイトルに涙はしなかったけれど、全ての【〇〇君】を見直して、なるほどなと感心した。

私がいいと思ったのは、

 

 

君は、きっとただ一人、私に真実と日常を与えてくれる人。

 

 

という桜の言葉。

病気を知ってから、医者は真実のみ、家族は取り繕った日常、友達もおそらく残り少ないさくらの為に必死で笑おうとしてくれるけれど、主人公の僕だけは真実を知りながら今まで送ってきた日常と変わらない毎日をくれる ということらしい。
僕からするとそんなものを与えているつもりはないのだが、さくらからすると腫れ物に触るように扱われるのはたまらない。死の話題を避けず、楽しく会話できる僕はとても大きな存在だっただろう。

ふたりは徐々にお互いにひかれあっていく。

僕はひたすら、さくらの望む日常を与え続ける。
死という絶望に直面しながら、それに向き合って生きていく人間の強さを感じた小説でした。